熟考の末に生まれた人生最高の家
2度目の家こそ理想が実現する、そんな言葉に深く頷きたくなる完成度の高さだ。35歳で最初の家を建てたときにはプランを熟考する時間がなく、長く暮らす間にライフスタイルも変化し、次第に住み難さを感じていたとKさんは語る。「62歳で建て替えをすることになったとき、今度こそはじっくりと理想のプランを考えようと思いました。以前の家の反省点から、明るく風通しの良いことが一番の希望でした。開放的な雰囲気で、まるで自宅にいながら別荘にいるような」
そこで家づくりを依頼したのが『フローレンスガーデン』。打ち合わせスタート当初は、明るさを第一に考えてパティオを希望していたという。しかし家の真ん中にパティオを配置すると、どうしても各部屋への通路を確保するために余分なスペースが必要となってしまう。さらに、1階にリビング、2階に寝室という位置になってしまい、日中過ごすリビングよりも寝室のほうが明るくなってしまう。そこで、何よりもリビングやダイニングの明るさを優先し、パティオではなく広いルーフバルコニーを設けた現在の間取りとなった。
1階には家族の寝室、バスルーム、そして海外生活の経験からシャワールームを設置。ウォークインクローゼットを備えた寝室とバスルームがつながっているため、たとえゲストがいるときでも気兼ねなく身支度ができる動線となっている。そして、品の良いロートアイアンの柵が施された階段を上がると、まずゲストルームとして使える和室、そして大きなサークルトップウインドウが目を引くダイニングルームに辿り着く。この部屋のみ切妻型の天井としており、太い梁が空間にさらなる風格を与えている。また、左のゲートの向こうには同じく南側に大きな窓を設けたキッチン、右のゲートの先にはルーフバルコニーを擁するリビングルームがある。勾配天井を採用し、バルコニーへの抜けとともに開放感を増幅している。
ジュネーブに11年暮らしていたというKさんご家族。フランス製のアンティークのオブジェ、スイス製のコンソールテーブルなど、当時から使っている家具や調度品が、驚くほど家のテイストと調和している。また、旅行が趣味というご夫妻は、旅先で蚤の市やアンティークショップに立ち寄るのが好きだという。その旅先で購入したオブジェが、さまざまな国からやってきたプロダクトとともに、この居心地のよい空間を演出しているのだ。
Kさんの現在の楽しみは庭の家庭菜園。自宅で収穫した野菜を、眺望抜群の明るいキッチンで調理し、風そよぐルーフバルコニーでいただく。そう、まさにKさんが理想とした別荘のようなくつろぎのある豊かな暮らしが、ここに実現している。