アーティストの感性が生きる家
エントランスのフレンチドアを開けた瞬間から始まる、リラグレイの物語。薄い青にかすかに紫、そしてグレイを混ぜた色がO邸の通奏低音。表面にエイジングを施したシャビーシックの空間には、ポーセリンアート作家でもあるOさんの感性が貫かれている。
リビングに置かれた、長さ3.5メートルのダイニングテーブルがすべてのモチーフ。絵付けのサロンレッスンを行うため、大きなテーブルを探していた時、フランスのブランドのこのテーブルに出合った。完全なひと目ぼれ。フレンチクラシックなテーブルを基点にイメージを膨らませたという。
「たくさんの色で飾るより、リラグレイを基調にしたグラデーションで統一しようと思いました。ドアとサーキュラー階段の手すりの色を最初に決め、それに合わせて、壁は質感がしっとりしたドライウォール、リビングの床には自然な風合いのあるオークの無垢材を。エントランスの大理石もシャビー加工するなど、注文が細かくてノアデザインさんは大変だったかも。でも、私がイメージしていた通りの空間に仕立てていただけました」
存在感あるリビングのシャンデリアは、お城に照明を納入するフランスのブランドのもので、オーダーから到着まで1年以上かかったという。それでも「他のシャンデリアに変更する気はぜんぜんなかった」とOさんは笑う。ポーセリンアートは、納得できる発色を得られるまで何度も窯入れを繰り返す。妥協しない創作活動が、リラグレイを基調とするO邸のカラーコーディネイト、空間づくりの背景にある。時を経るに従い、より深みある美しさをまとっていくだろう。