美しく理にかなった瀟洒な住まい
石畳のアプローチを進むと姿を現す瀟洒な建物。両開きの玄関ドアを開けると、大理石の床からサーキュラー階段がゆったりと2階へ伸びるホールが出迎える。階段を辿って視線を上げると、シャンデリアを配した吹き抜けに圧倒され、仕切り壁に施されたロートアイアンの装飾に目を奪われる……。 畳み掛けるような美しい造形の連続がリズミカルにつながるこの邸宅は、ノアデザインによるもの。施主のTさんご夫妻はハワイで見つけた住宅誌で輸入住宅に憧れを抱き、実際に日本でも建てられると知ってから、いつかは建てたいと思っていたのだと言う。その願いが今回、最高のかたちで結実したのである。
間取りは玄関ホールを囲むように、リビング、ダイニング、キッチン、ファミリールームが並ぶ。中でも28㎡の広さをもつキッチンには、奥さまの並々ならぬこだわりが詰まっている。まず、雑誌に載っていたキッチンの写真でイメージを伝え、ブラックとダークブラウンのシックなカラーで統一。そして壁面には余すところなく収納を設け、食品や食器、調理器具を機能的に仕舞えるようにした。さらにキッチンの隅には作業スペースを用意し、パソコンでの調べものなどにも便利に使えるようになっている。「以前の家のキッチンが狭かったので、今回はできる限り広くしたかったんです。今は本当に使いやすくて満足しています。ダイニングとの間の窓から、お客様の様子が窺えるのも便利なんですよ」と奥さま。しばしばご友人を招いて、腕をふるった料理でおもてなしされているそうだ。
リビングの家具や調度品には上質なものを配し、ゲストにくつろいでもらいたいという心遣いが感じられる。また、家族が憩うときにはファミリールームを使用。パブリックとプライベートを振り分け、かつ回遊できる機能的な間取りである。
さらに室内だけでなく、屋外にもこだわりを発見できる。憩いの場として十分に使えるようにカバードポーチを広くとり、その分大きくなった屋根には天窓を設けて明るさを確保した。
美しく、理にかなった設計。Tさんご夫妻の希望を受け止め、外観、内装、間取り、装飾すべてに作り手の提案力を感じられた。