• パリを含むイル=ド=フランス地域圏の伝統建築様式である、急勾配の平板瓦と天然石の壁面に目を奪われるA邸の外観。アイアンの門柱のゆるやかなカーブとの組み合わせが、センスの良さを感じさせる。

  • エントランスホールから続くリビングルームは「海のリゾート」がモチーフとなっている。高い天井、トップライトから降り注ぐ陽光、ブルー系のカーテン、絨毯で構成されるテイストの異なる2つの空間の間は、ドアで仕切るのではなく、柱でつないだゆるやかなアーチ、そして足元のタイルを境界としている。

  • エントランスホールから2階へ続く階段には、玄関ドアと同じブルーの絨毯を使い、統一感を持たせている。階段の手すり、奥の扉と横のスタンドなど、ご主人の意向で、空間のあちこちにアイアンがポイント使いされている。

  • 海のリゾートをイメージしたリビングの向こうには、「山のリゾート」を意識したダイニングがある。天井に存在感のある梁を設け、壁にはストーンタイルを使うなど、海外の高原にある山小屋を意識している。海と山のコントラストが、A邸の特徴のひとつだ。

  • 塔屋部分の内側は、光をたっぷりとり込めるサロンとなっており、晴れた日の朝食、またはランチには最高の舞台だろう。天井は5mを超え、壁の下は擬石、上は白の塗り壁にすることで、より高さが強調されている。

  • キッチンは、奥様の要望もあってブラックを選択。背後の壁に赤レンガを使い、イメージは「イタリアンモダン」だという。カウンターでは、3人の子どもたちが並んで朝食を食べることも多く、奥様のお気に入りの場所だ。

  • リビングとダイニングの間を壁で区切るのではなく、アーチを設けることでテイストの違う2つの空間を優しく間仕切りの役目を果たす。

  • 主寝室は、ご主人の要望で壁、天井ともにモールディングを採用し、ほかとは少し雰囲気を変えてある。腰壁以外は薄いブルー系のイギリス輸入クロス、カーテンは透け感が柔らかいブルーでクロスと濃淡をつけ、アクセントにしている

  • 3つある子ども部屋は、壁紙もカーテンも家具も、すべて子どもたちが考え、選択したという。写真はお嬢さんの部屋で、「カントリー調にしたかった」という理由から、落ち着いた色合いになっている。

  • バスルームは洗面所、バスコートとガラスを介して繋げたイメージでホテルのようなラグジュアリーな空間デザインを施した。ウッドブラインドで目隠しできる。トイレの壁紙はモダンなパターンの輸入クロスを選択しており「見た目で遊びたかった」と、ご主人。

長年の思いを具現化した本物の輸入住宅

欧州への憧れと本物の技術との出会い

 仕事の関係でヨーロッパ、しかも郊外の街に出かけることが多く、時の流れを風格として刻むような家づくりに憧れたAさん。最初に建てた家はイタリアの小都市の家をイメージしたが、この家はフランス郊外のお城を思い浮かべたという。
「前に建てた家は少し中途半端な感じになってしまったので、今回は本物の輸入住宅をつくりたかった。そして品の良いリゾートのように寛げる空間にも仕立てたかったので、建材も技術も本物のトップメゾンを選びました」
 エントランスホールからリビングに入ると、手前と奥で空間のテイストがまったく異なることに驚かされる。手前は海のリゾート、奥は山のリゾートで、当初から「2つのテイストを持つ空間を共存させたい」と、ご主人がリクエストした。
 5mを超える天井まで届く、大きな窓から光が降り注ぐリビングは、抜群の開放感。カーテン、絨毯の色はブルー系とすることで、確かに、海のリゾートで寛ぐような気分になれる。 奥は山のリゾートとなり、木目のぬくもりを生かした、落ち着いた雰囲気となっている。それぞれコンセプトが明確だが、共存させることに不安はなかったのだろうか。
「なかったといえばウソになります。でも違和感なく共存させるにはどうすればいいのか、トップメゾンと話し合ううちに不安はなくなりました。柱のアーチ、床のタイルで2つの空間をスムーズにつなぐセンスは、さすがだと思いましたね」
 仕事やプライベートで使ったホテルのバス、家具、小物などの細かな備品など、ご主人が写真に撮って要望すると、可能な限り対応してくれるフットワークの良さもあったという。「この家を建てて、本当によかった」本物の輸入住宅を手に入れたAさんは、お気に入りのリビングで、そう笑った。

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