• 門を入ると、ほぼ直角に曲がるアプローチがエントランスへ続く。プライバシーに配慮し、通りから直接見えないようにしながら、別世界の始まりという意味も持たせた。

  • 「ヨーロッパのリゾートが好き」というTさんの好みをふまえ、瓦屋根が印象的な、スパニッシュスタイルの外観を提案。ヤシの木がリゾート気分を高めてくれる。

  • リビングからつながるオープンテラス。陽当りがよく、晴れた週末はテーブル、椅子を用意してランチタイムを過ごすことも。友人・知人を招くパーティでも重宝するスペース。

  • エントランスにはカヴァードポーチを備え、ここでもプライバシーに配慮。上がハーフラウンドになった木製のドアは輸入物で、アイアン装飾もあり、リゾート感が高まる印象だ。

  • タイルとモザイクタイルが空間を演出するエントランス。照明を設置した折り上げ部分の内側にもモザイクタイルが貼ってある。奥に窓を設置することで十分な奥行きも表現。

  • 手前はダイニング、向こうはリビング。2つの空間を完全に区切るのではなく、アーチの壁を境に世界が変わる間取りに。床のタイルは同素材で別の色を使い分けている。

  • タイルと木材を組み合わせた床、天井の梁の装飾など、デザイン的に見るべきところも多いリビング。積石造のヨーロッパの建築をモチーフに、窓の上部はハーフラウンドにしてある。

  • 南欧リゾート風邸宅に和室を違和感なくなじませるため、廊下の部分に欧米のジャポニズム的な要素を取り入れた。緩衝材的な空間であり、洋と和をつなぐ位置づけだ。

  • 純粋な和室ではなく、和モダンといったテイストでまとめてある。床の間があるべきところには、輸入の天然石を使った「床石」に。雪見窓の向こうは和風の庭になっている。

  • お客様も使うことがあるトイレは、壁にモールディングを施したアーチを描き、その中にモザイクタイルを張るなど、デザイン的に遊び心ある空間となっている。

南欧リゾートで見る夢のように、心地よい空間

空間の移り変わりを表現するデザインの力

スパニッシュ風の瓦屋根、陽あたりのいいテラス、庭に植えられたヤシの木など、南欧のリゾートに建つ、瀟洒な低層リゾートホテルのようなたたずまいのT邸。リゾートで過ごす時間は、移動するたびに、映画のワンシーンのように見える光景が移り変わるもの。参會堂がT邸で実現したのも、その移り変わりである。
物語は、通りに面した門から始まる。アプローチまでを直線ではなく、90°の角度をつけることで、門からエントランスが見えないようになっている。一歩足を踏み入れたときから、時間の流れが切り替わる演出だ。エントランスホールは廊下の奥に窓があり、その先はパティオのような裏庭の緑。日常とは切り離した、特別な時間の始まりを表現している。
木製の梁、ヘリンボーンに組んだフローリングが印象的なリビングと、隣のダイニングをつなぐのは、アール開口の身近なトンネル。ダイニングは床がタイル張りとなっており、空間としてつながりながら、見える光景は明らかに異なる仕掛けだ。
時間の流れ、見える光景の移り変わりが、象徴的にあらわれるのが和室。当初のからのリクエストだったが、南欧リゾートから和モダンの空間へ至る廊下は、照明を落とし、玉砂利を敷いたトンネルを思わせる雰囲気で、その先に広がる光景に胸が高鳴る。
映画のワンシーンは、細部にこだわることでより印象的なものになる。T邸の場合、それはタイル、モザイクタイルの使い方だろう。エントランスホールの照明の内側や、トイレのアール開口風装飾の中にも、さり気なく張られたモザイクタイル。細かな意匠が物語の句読点となり、次のシーンへと切り替わる。心地よいリズム感が表現されているのだ。

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