• 玄関の上に設けられたバルコニーのロートアイアンが、ヨーロッパらしいエレガントさを強調している。また、玄関に4本のコラム柱を置いたことで、本物だけが持つ重厚感を加えている。

  • 2階から階段越しにエントランスホールを見下ろす。アイアンの黒が、白を基調とした空間全体を引き締めている印象を受ける。強度を保ちながら、サーキュラー階段を自立させるには高度な技術が求められるが、『伊藤建築デザイン』は他の物件でも手がけているという。

  • お城の構成要素としてマストだったサーキュラー階段は、サイドの壁に取り付けることなく、自立させながら、3次元にひねっているところが大きな特徴。強度はしっ
    かり計算されている。

  • 1階はドア、壁の仕切りをなくし、家族のための生活スペース「GREATROOM」をコンセプトにプランニングされた大空間となっている。オープンキッチン、ダイニング、リビングが自然につながり、インテリアはイタリアンテイストのモダンミックス

  • お城のイメージである白を基調に、テーブルの椅子、カウンター前のスツール、カーテンの色を効果的なアクセントに使っている。ダイニング上は折り上げ天井となっているが、4段に折り上げられるため、深さに思わず目を奪われる。

  • 単に料理をするためではなく、料理を愉しみながら、家族の気配を感じられるカウンターキッチン。奥様の要望を形にするため、フルオーダーしたという。「収納も多く、とても使いやすい」と、満足されている様子だ。

  • ホテルライクにスタイリングされた主寝室は、薄いグレージュと柄物の紙クロスで落ち着いた雰囲気に。ベッドサイドの照明を含め、シンメトリーを意識している。天井は4段の折り上げで、空間に深みを与えている。

  • 塔屋、2階部分内側の子ども部屋は、5面窓からの採光で十分な明るさがある。紫の壁本人が選び、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』に登場するお姫様、ラプンツェルの部屋をイメージしているとか。

  • 邸宅全体のキーカラーである白と、植物柄の紙クロスで構成されたパウダールーム。ダブルボウル仕様だが、鏡は大きなサイズのもの1つに。白基調だと単調になりがちだが、ドアや収納の面材の装飾が変化を加えている。

  • 邸宅全体は白を基調に、女性的なエレガントさでまとめられているが、浴室は思い切って男性的な方向に振り切ってみた。全体的にシックなカラートーン、壁にはデザインタイルを大胆に張ることで、個性を際立たせている。

繊細な装飾と色使いが映えるイタリアネート様式の“お城”

サーキュラー階段を自立させ、3 次元にひねる。経験と技術が裏付ける仕上がりには大満足

当初からの希望だった塔屋の配置には2通りの考え方があった。アプローチ側に配置して迫力を持たせる。玄関とのバランスを重視して奥に配置する。選択は後者。奥に配置し、イタリアネート様式らしいデンティルモールで装飾することで、バランスを取りながら、主張もある外観デザインとなっている。
エントランスのドアを開けると、白を基調とした空間に“浮かんでいる”、黒いアイアンのサーキュラー階段が目に飛び込む。“浮かんでいる”はレトリックではなく、壁に取り付けずに自立させ、3次元でひねっているため、空間に浮かぶように見えるのだ。デザインセンスに加え、構造や強度の緻密な計算が求められる階段は、H邸のハイライトといえる。
1階はリビング、ダイニング、キッチンを含め、仕切りのない大空間となっているが、これはご主人の要望によるもの。「家族はもちろん、友人、知人を招いても、みんなが気持ちよく過ごせるようにしたかった」という。最初は漠然としていたお城のイメージが、今は自分たちの暮らしを彩る場に。細かな装飾を含め「やりたいことはすべて形にしてもらいました」と、Hさんは満足そうに笑った。

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