サーキュラー階段を自立させ、3 次元にひねる。経験と技術が裏付ける仕上がりには大満足
当初からの希望だった塔屋の配置には2通りの考え方があった。アプローチ側に配置して迫力を持たせる。玄関とのバランスを重視して奥に配置する。選択は後者。奥に配置し、イタリアネート様式らしいデンティルモールで装飾することで、バランスを取りながら、主張もある外観デザインとなっている。
エントランスのドアを開けると、白を基調とした空間に“浮かんでいる”、黒いアイアンのサーキュラー階段が目に飛び込む。“浮かんでいる”はレトリックではなく、壁に取り付けずに自立させ、3次元でひねっているため、空間に浮かぶように見えるのだ。デザインセンスに加え、構造や強度の緻密な計算が求められる階段は、H邸のハイライトといえる。
1階はリビング、ダイニング、キッチンを含め、仕切りのない大空間となっているが、これはご主人の要望によるもの。「家族はもちろん、友人、知人を招いても、みんなが気持ちよく過ごせるようにしたかった」という。最初は漠然としていたお城のイメージが、今は自分たちの暮らしを彩る場に。細かな装飾を含め「やりたいことはすべて形にしてもらいました」と、Hさんは満足そうに笑った。