• 急な勾配と、水平を組み合わせた屋根が印象的。壁は漆喰で、光のあたり方で微妙に表情が変わる。玄関に続くアプローチにはレンガを敷き詰めるなど、一見シンプルに思えるが、細部を見ると、見るべきポイントが多いデザインとなっている。

  • 白と木目のコントラストが美しいエントランスホール。一人掛けのソファ、一緒に置かれている家具は、アメリカに滞在していた頃に買い集めたもの。思い出が刻み込まれた家具、小物、雑貨との調和が家づくりの大きなテーマだった。

  • アメリカで暮らした5年間に憧れがあったものの、そのままの家を再現しようとは思わない。経験をベースに、今の自分たちの考え、趣味を合わせたスタイルを描くことを優先している。ダイニング中心に切り撮った1枚だけでも、独特のセンスが随所に感じられる。

  • エントランスからリビング、ダイニングまで、床は無垢のパイン材を使い、ダークにオイル塗装することで統一感を強調している。ダイニングテーブル、椅子、照明などはアメリカで購入していたものだ。

  • リビングの一角には、壁も利用しながら、アメリカで買い集めた家具、小物、雑貨などを置くスペースがつくられていた。古いミシン、トルソー、窓枠、照明などを集め、小さなミュージアム的に。「好きなものに囲まれて暮らす」を形にした空間といえる。

  • リビング・ダイニングの壁の1面を使って、オープンの本棚を設えてある。イメージしたのは、海外の邸宅のリビングにある本棚。本だけでなく、小物、雑貨などを自由に配置することで、日々の生活の中に、思い出の品が自然になじむようにしたかった。

  • たっぷりの収納を造作してもらったキッチン。家電もアメリカで購入したデザイン性の高いものが多く、収納に隠すもの、空間の一部として見せるものを分けている。デザイン的なまとまりはもちろん、床はタイルを使うなど機能面にも配慮している。

  • 作業台の上にはアイアンの吊り棚を設置して、アメリカで買い揃えた、奥様お気に入りの調理器具が置かれている。収納でありながら、ダイニング方向から見えるつくりになっているのがポイント。黒をポイントに使い、空間が軽くなりすぎないような配慮も。

  • 玄関ホールから入ったところに、パウダースペースを設置。面積的には決して大きくはないが、造作した小さな洗面台を中心に、タイル、ミラー、照明を合わせ、実用的かつ見た目も可愛らしいスペースとなっている。

  • 家のデザインを完成させているのは、空間のあちらこちらに配置されている雑貨である。アメリカで購入した雑貨は、造形も色合いも、アクセントを利かせるのに十分な個性がある。照明は、壁に備え付けて使うコーヒーミルで、小さくても独特の存在感を放つ。

見せること、暮らすことのベストバランス

アメリカで買い揃えたお気に入りたちに、囲まれて暮らす幸せ

仕事で約5年間、アメリカで暮らしていたご夫妻。もともと「家を建てるなら輸入住宅」と考えていたが、リアルな暮らしを体験することで、その思いは夢から、具体的な計画へと変わっていったという。
アメリカの友人、知人の住まいを訪ね、“本物”を感じると同時に、家具、小物、雑貨にも魅了された。高級店ではなくても、デザイン的にセンスのあるものが多く、買い揃え、日本へ帰国。家づくりのプランは、向こうで購入した家具、小物、雑貨をどう取り入れるかが重要なポイントだった。
大きな方向性は「素材を楽しみながら、心地よく暮らすこと」。外壁も室内も、壁は漆喰にこだわり、微妙な表情の変化を楽しむことにした。建材は、可能な範囲で北米から輸入したが、品質とデザインで納得できるものは、国産のものを抵抗なく取り入れている。
室内に足を踏み入れると、漆喰の壁とフローリング、家具の木目を基調に、やわらかい印象に仕立てられている。リビング、ダイニング、キッチンはゆるやかにつながり、開放感も十分だ。
インテリアは「見せる」ことにこだわった。リビングの一角に、古いミシンや雑貨でディスプレイした空間を設け、壁の本棚にもお気に入りのものたちが並ぶ。キッチンにも見せ場が多く、デザイン性の高い家電、カラフルな調理鍋などを、あえて見せるように空間がつくり込まれている。それでいて、機能性も十分に確保されているところはさすが。家づくりのひとつのお手本となるようなインテリアだ。

掲載企業一覧company