• 窓などのシンメトリーな配置が印象的な外観。明治から大正の洋館に用いられた伝統的な技法、ドイツ壁が重厚感を与える

  • 手前のリビングと、アーチ状の壁によってゆるやかに仕切られたダイニング。室内の壁は漆喰となる

  • エントランスホールのドア越しにリビングを望む。カーテンボックスは、設計の段階から組み込まれていた

  • 床に貼られた六角形のタイルが印象的なキッチン。水栓金具等を含めて、輸入したエレメントで構成されている

  • ダイニングとキッチンもアーチ状の壁でゆるやかに仕切る。照明は、大正時代の洋館で実際に使われていたアンティーク

  • 窓の上の欄間窓のアーチがデザインのアクセントとなるバスルーム。ガラスのモザイクタイルも効果的に使われている

  • 大きな鏡が目を引くパウダースペースは、ボウル、水栓金具などを輸入もので揃えた。間接照明で落ち着ける空間に

  • 木材の表面に削り痕を残す日本の伝統技法、「なぐり加工」を採用した天井。「洋館へのオマージュ」という邸宅のコンセプトが端的に表現される空間だ

  • 窓枠、階段の手すり、アイアンなどの細部にも、「古き良き時代の洋館を再現したかった」という施主の思いが貫かれている

  • 室内は全体的にシックなトーンでまとめられているため、トイレは雰囲気を変えてカラフルに仕立ててある

古き良き時代の洋館建築をリアルに蘇らせたい

独特の重厚感、高級感、存在感を放つ、クラシカルな邸宅

クラシカル、ノスタルジア、レトロ。古き良き時代への憧憬が起点となる家づくりの難しさは「どこまで当時を再現するか」だ。建材も建築手法も、当時と現代で異なるなかでの選択肢は2つで、1つはデザインの要素だけ取り入れること。もう1つは、可能な限りの再現に挑むこと。この邸宅は後者、明治から大正にかけて、国内で建てられた洋館のリアルな再現を目指したという。
明治時代、日本に洋館建築を広めた人物の1人であるウィリアム・M・ヴォリーズ。その建築物は、滋賀県の近江八幡市に多く現存している。この邸宅の設計はもちろん、施工前段階で何度も現地を訪れ、本物に使われているデザイン、建材、建築手法などを間近で見て、それぞれの要素を現代に置き換え、家づくりを進めていった。その象徴ともいえるのが、独特のゴツゴツとした質感が印象的な、外壁のドイツ壁である。
これは、明治、大正の頃の洋館建築に多く使われていたヨーロッパの伝統技法で、古い洋館を再現する上での決め手となる。ただし、今、この技法で仕上げられる職人はほぼいない。ノエルハウスは、職人とともに近江八幡に足を運び、現物を調べ、学び、あくまでも本物の再現にこだわった。時間はかかったが、他にない重厚感、高級感を持つ外壁を現代に蘇らせている。
ドイツ壁で仕上げた邸宅の照明は、多くが明治、大正、昭和初期のアンティーク。単体でも味のある存在だが、当時のたたずまいを再現した邸宅と組み合わせると、より深い陰影のある灯りをともし、空間の格式を高めてくれる印象も受ける。
憧憬を完成度高く形に出来たことで、施主も大いによろこばれているという。

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