独特の重厚感、高級感、存在感を放つ、クラシカルな邸宅
クラシカル、ノスタルジア、レトロ。古き良き時代への憧憬が起点となる家づくりの難しさは「どこまで当時を再現するか」だ。建材も建築手法も、当時と現代で異なるなかでの選択肢は2つで、1つはデザインの要素だけ取り入れること。もう1つは、可能な限りの再現に挑むこと。この邸宅は後者、明治から大正にかけて、国内で建てられた洋館のリアルな再現を目指したという。
明治時代、日本に洋館建築を広めた人物の1人であるウィリアム・M・ヴォリーズ。その建築物は、滋賀県の近江八幡市に多く現存している。この邸宅の設計はもちろん、施工前段階で何度も現地を訪れ、本物に使われているデザイン、建材、建築手法などを間近で見て、それぞれの要素を現代に置き換え、家づくりを進めていった。その象徴ともいえるのが、独特のゴツゴツとした質感が印象的な、外壁のドイツ壁である。
これは、明治、大正の頃の洋館建築に多く使われていたヨーロッパの伝統技法で、古い洋館を再現する上での決め手となる。ただし、今、この技法で仕上げられる職人はほぼいない。ノエルハウスは、職人とともに近江八幡に足を運び、現物を調べ、学び、あくまでも本物の再現にこだわった。時間はかかったが、他にない重厚感、高級感を持つ外壁を現代に蘇らせている。
ドイツ壁で仕上げた邸宅の照明は、多くが明治、大正、昭和初期のアンティーク。単体でも味のある存在だが、当時のたたずまいを再現した邸宅と組み合わせると、より深い陰影のある灯りをともし、空間の格式を高めてくれる印象も受ける。
憧憬を完成度高く形に出来たことで、施主も大いによろこばれているという。