奥へ、上へ。少しずつ目線が移るスキップフロアを巧みに配置
1階から3階までの外壁の一部は、窓、モールディングを統一感を強調するデザイン要素として取り入れ、個性的な表情に仕立てられている邸宅。限られた敷地面積のなかで、室内は、最大限の奥行が感じられるように設計されている。
特徴的なのは、個々の空間をつなぐリズム感だ。エントランスフロアから、スキップフロアを経てリビングへ、そしてダイニングへ。階段が途切れることなく続き、少しずつ、上へ、奥へ、目線が移っていく。独特の連続性、リズム感は、この建築条件だからこそ実現できた部分であり、設計の妙、ともいえる。
室内は、壁も天井も階段も白を基調にまとめられているが、不思議と単調な印象はない。進むたびに目線が高くなるスキップフロアだけでなく、階段の手すりのゆるやかなカーブ、黒のアイアンが絶妙なアクセントとなっているためだ。センスと経験豊富な設計力と、それを形にする施工力があってこそ実現する空間、といえるだろう。
連続性、つながりは間取りにも反映されている。キッチンは吹き抜けで十分な高さがあるが、3階の子ども部屋の内窓を開けると、空間としてゆるやかにつながるようにつくられている。奥様が料理している様子が、子ども部屋からは感じられ、キッチンからひと声かければ、子ども部屋に声が届く。空間だけでなく人のつながりも生まれるのだ。
外壁が象徴するデザイン的な遊び心。スキップフロアが生み出す、論理的な空間設計。白を基調とすることで生まれるエレガントさ。そして、空間も人も有機的につながるように配置された間取り。シンプルなようでいて、要素を分解していくと、さまざまな視点から語ることができる邸宅である。