常識にとらわれず、
空間をリ・インベンション(再発明)する

築30年、鉄骨2階建ての戸建てをフルリフォーム
「海外のインテリアが大好き」という奥様の理想を形にするため、空間を丸ごと移動するような、ダイナミックな提案が行われている。 そして、むき出しの梁や鉄骨をデザインのエレメントとして生かしながら、クラシックモダンという魔法をかけた空間に生まれ変わった。

1階と2階のスペースを入れ替えるという大胆発想 制約も多いマンションのリノベーションと違い、戸建ての場合は比較的自由に間取りの変更ができる。
I邸は鉄骨造のため、柱、壁、耐力壁以外の部分は撤去することで、増築せず、ダイナミックな間取り変更が行われた。
最も大きな変更点は、1階と2階の空間の位置づけを、ほぼ丸ごと入れ替えたところ。以前、キッチン、リビング、ダイニングの生活スペースは1階にあったが、これを2階へ。2階の寝室、和室は1階へ移動。1階は3つの寝室で構成されるプライベートゾーンという位置づけになった。
 I邸のリノベーションのハイライトは、2階に出現した広々としたLDKスペースだ。壁をすべて取り払い、天井も抜くことで、広さも高さも十分な空間が生まれた。鉄骨はむき出しのまま、デザインの要素として残し、壁と同じ色に塗り、梁の形も無骨さを残しながら全体との調和が図られている。凛とした透明感のある空間に、アクセントを利かせているのが黒アイアンのガラス戸、そしてブラケットライトだ。 家具は奥様の好みを踏まえ、空間のテイストに合わせるように、モダンなものをセレクト。現代風な明るさの中に、上品さも感じられるクラシックモダンスタイルが完成した。
 空間デザインのポイントの一つがモールディング装飾である。西洋の建築様式と調和しながら発展し、建築美の表現として受け継がれ、洗練されてきたモールディング。海外のインテリアの象徴的なエレメントであり、エントランス、トイレ、寝室まで各所に取り入れたことを、奥様は特によろこばれたという。戸建てリノベーションの可能性を、広げてくれる事例といえるだろう。

CASE 03 / I邸

  • リビング

  • [After]

    ベッドルーム、和室、物置きで構成されていた2階部分は、壁をすべて取り払い、天井も抜いて、広々としたリビング・ダイニングとしてリノベーションされている。天井を抜いた際にあらわれた鉄骨は、壁の色と同じ塗装にすることで、デザインとして残してある。むき出しの梁、アイアン、ブリック、メトロタイルなどを特徴とするインダストリアルスタイルの要素を取り入れながら、清潔感のあるコーディネートを意識。家具はモダンテイストを選び、洗練されたクラシックモダンスタイルを完成させた。

  • ダイニング [After]
  • [Before]

    壁をすべて取り払い、天井も抜いたリノベーション前。

  • ベッドルーム

  • [After]

    寝室は休息のため以外の要素を排除し、心地よく、上質な安らぎを得られる空間づくりを目指した。イメージしたのは、優美さと、心身を解きほぐしてくれるやさしさで包む、ホテルのスイートルーム。素足でも心地よいカーペットを全面に敷き、壁はあたたかみのあるグレージュを選び、モールディングの凹凸が美しい陰影を生み、飾られた絵が映えるように考えられている。全体をやわらかいグラデーションカラーでまとめることで、目指していた、スイートルームの雰囲気を表現できた。窓際には造作のベンチが設えてあり、夜、ほのかなあかりが灯る空間で、就寝前のリラックスタイムを楽しむこともできる。

  • 玄関

  • [After]

    リノベーション後は、ドアを開けると正面の壁が目に入り、フォーカルポイントとしてミラーを置くことで、奥行きと広がりが強調されている。大型のシューズクロークを備え、ものをすっきり収納するのも可能に。

  • [Before]

    以前の玄関は、ドアを開けると収納棚が目に入り、全体的に暗い印象。

  • [After]

    リノベーション前は、家の表情が見えなかったI邸だったが、リノベーションによって雰囲気は大きく変わった。外壁は明るく塗り直しながら、エントランスに続く階段、バルコニーの手すりを黒のアイアンとすることで、コントラストを強調。また、窓枠にケーシングを施すことで、家としての表情が明確になった印象を受ける。

  • [Before]

    リノベーション前は、家の表情が見えなかったI邸。

  • 図面

  • 1階のクローズドのキッチンとリビング・ダイニングを2階へ移し、2階の和室は廃止して、個室はすべて1 階へ移動するという、大がかりな間取りの変更が行われている。2階は壁を取り払い、天井を抜き、広さ、高さも十分なLDKスペースに。キッチンは収納力のあるパントリーを備え、リビング奥の扉の向こうには独立した書斎スペースを設けるなど、機能性も考え抜かれている。

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