急勾配の切妻屋根は腰折れ屋根であるが、庇部分が緩い勾配で長く張り出している。庇部分は柱で支持され、屋根の断面はS字形。鎧戸付きのダブルハング・ウィンドウが主体で、ガラスは各戸とも6枚で構成されている。玄関は上下に分かれる2枚扉が中心だが、1枚扉で欄間と側窓を設けたものも多い。
ダッチコロニアル様式は、オランダ植民地様式と和訳できる建築様式である。今のニューヨークが、かつてはニューアムステルダムと呼ばれていた事実が示すように、17世紀以降オランダの植民地として開拓された北米東海岸の土地が、後に英蘭戦争でイギリスへと割譲されてからもオランダからの入植者が中心であったことから、彼らのアイデンティティを表現するものとして、オランダの建築様式による建築物がこの地で建てられた。
オランダの街中の建築物は、街全体が運河や城壁で囲われ限られた都市内に、住宅が隣戸と壁を接してつくられている妻入り住宅が多い。共通しているのは、極めて経済的に合理的で、ローコストで高品質(デザイン、機能、性能)を実現しようとしている点である。たとえば、屋根裏の有効利用のために、マンサード(腰折れ)屋根や急勾配の屋根にしたり、軒高を抑えて採光を有効にとるため、軒部分をはね上げさせるなどの工夫がされ、デザイン上でも美しく見せるように工夫されている。
ダッチドアと呼ばれている玄関扉は、扉が上扉と下扉の2段に分かれていて、それぞれが別々に開閉できることが特色である。しかしオランダの扉は必ずしもこの形ばかりではなく、ダッチドアを使わないダッチコロニアル様式の建築も多数存在している。