フレンチ・ルーラル様式
FRENCH RURALフランス農村部の豪華な邸宅を米国人が愛情とともに再現した様式

 フレンチ・ルーラル様式は、必ずしもそのデザイン要素が固定しているわけではない。フレンチ・ルーラル様式と呼ばれている様式は、米国から見たときのフランス各地にあるバナキュラー(土着)な農村にある資産家の邸宅のデザインを総称するものである。ノルマンディ地方のものもあれば、プロバンス地方のものもあるが、基本的に組積造として造られたもので、左右対称型またはそれに近い安定感の高いデザインのものを指す。
 デザインの特性としては、鋭角的な形状の屋根であるため、ルーフドーマーウィンドウが設けられ、建築デザインの中心は、開口部(扉と窓)まわりの意匠で変化する。円筒形にスレートを使った三角錐の急勾配の屋根がある、鐘塔の意匠も取り入れられる。開口部や建築物の隅にはクオイン(隅積み)を取り入れたり、自然石積みとしたり、欄間にはハーフティンバーを用いたりしている。
 これらのフレンチ・ルーラル様式は、第一次世界大戦でヨーロッパ戦線に従軍した米国人たちが、毒ガスなどで被害を受けてフランス農村の豪邸で世話をしてもらった経験と、それによるフランスへの愛情と感謝の念から、帰国後フランスの地方の邸宅に倣った住宅を建てようとブームになったものである。この様式は別名、フレンチ・エクレティック(折衷)様式とも呼ばれている。