インターナショナル様式は、1932年にMoMA(ニューヨーク近代美術館)で開催された近代建築展をフィリップ・ジョンソンとH・R・ヒッチコックがまとめた書、『インターナショナル・スタイル――1922年以降の建築』にちなんで名づけられた。フランスのル・コルビュジエが設計した「サヴォア邸」に代表される、きわめて単純で装飾性を一切排除し機能本位に徹したデザインは、その後の世界の古典派建築様式を震撼させた機能主義(ファンクショナリズム)の原点と言われるものである。
フランスのル・コルビュジエ、オーギュスト・ペレ、ドイツのヴァルター・グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエ、ウィーンのアドルフ・ロースなどが、歴史性や地域性にとらわれず、この時代の材料と工法によって建築デザインを開発した。そしてこの考え方は1930年代にアメリカに紹介され、鉄骨構造骨格と非耐力壁の結合による建築として大きな発展を遂げた。機能主義に徹したインターナショナル様式は、それまでの建築デザインの中にあったヒエラルキー(序列構造)を排除した様式として、戦後の世界の建築をリードすることになった。しかしそれゆえに、人々の文化的な帰属意識が低いデザインでもある。
自然科学的な合理性を極めた、無国籍で文字通りインターナショナルな様式であるが、「装飾を排除したインターナショナル様式ははたしてデザインなのか」との批判も起きた。これに対して、建築美とは構造体の調和(プロポーション)自体がもつ安全性と審美性が不可分であり、装飾がなくてもプロポーションに優れたこの様式は1つの時代の生んだ美であるとして、評価されることになった。
1940年代以降には、過去の伝統的建築様式から一切の装飾を取り外したミニマム・トラディショナル、ランチ、スプリットレベル、コンテンポラリー、シェッドなどの名で呼ばれるデザインも生まれ、これらをモダン様式と呼んでいることもある。