緩勾配の寄棟屋根で、庇が張り出している。対称形を原則とし、中央部分にペディメントのあるポーチコが計画される。ペディメントは、パラペット形のバロック風切妻壁。ダブルハングウィンドウが一対で左右対称に取り付けられる。玄関扉の側には採光用側窓がある。
スペインのアメリカでの修道院建築物のデザインを総称して、スパニッシュ・ミッション様式と呼んでいる。
歴史的には、スペインによるメキシコ、カリフォルニアの統治の延長線上に生まれたものである。南カリフォルニアは降雨量の少ない地方であるため、アドベ(日干し煉瓦)を使った建築物が建てられていた。これらのアドベを用いてミッション(修道院)建築が造られた。スパニッシュ様式に、教会建築に取り入れられたバロック風の切妻壁を取り付け、窓や屋根には赤や緑の瓦、そして白い漆喰の塗り壁が取り入れられた。そして吊り鐘が屋根のパラペットに設けられた。
1812 年、サンフランシスコを襲った大地震によって多くのミッション建築物も倒壊して廃屋と化したが、その頃になって、ミッション建築物のもつ素朴さが、懐かしい味わいのある建築デザインとして認識されるようになった。そして鐘楼の形のパラペット、赤や緑のスペイン 瓦と漆喰の塗り壁の味わいを、建築デザインとして取り入れるようになった。
スパニッシュ・ミッション様式は、1915 年サンディエゴで開催されたパナマ・カリフォルニア博覧会を特色付けるスパニッシュ・コロニアル建築様式の一つとして採用され、多くの人々から好意をもって迎えられ、その様式としての地位を不動のものとすることになった。